メシはのどごし
「ビールはのどごし」なんて言うけど、俺に言わせれば、のどごしなのはビールだけじゃない。
ラーメンものどごしだし、寿司ものどごし、大福だってのどごしだ。
のどで味わってる。
のどにどれだけの刺激があるか。
それが大切。刺激が強ければ強いほど、美味いような気がしてくる。
デカいものを飲みこんで、のどをギュウギュウいじめたい。
だから、ほとんど噛まない。
極力噛む回数を少なくして、原型をとどめたままのどにぶちこみたい。
のどの内側にその食べ物の形をインプットしたい。
噛まないから、めちゃくちゃ早食いだ。
とくに冷たいそばやうどん、フランクフルト、寿司は早い。
ちょうど俺ののどにフィットするサイズで、ひと噛み勢いをつければ、すいっと胃に滑りこんでくる。
のどへの侵入スピードはのどごしの大切な要素だ。
大きくて太いもののほうが、のどへの刺激は強い。
豚バラ肉より鳥ムネ肉のほうが「肉塊のお通りですよ」とのどをキュウキュウ押してくれるから好き。
麺も、そばよりうどん。味でいえばそばも好きだが、のどごしは圧倒的にうどんがまさる。
田舎そばはゴシゴシしてて、太さもなかなか。そばのなかでは頑張っていて応援できる。好きだ。
そうめんはダメだ。
のどへの刺激を完全に放棄してる。
俺がファラオならムチで叩くし、太宰だったら「食べ物、失格」と小説にしてる。
実家に住んでたころ、夏場そうめんが出てくるとめちゃくちゃテンション下がった。
「こんなもの、のどが無い奴の食い物だろ」と思っていた。
冷や麦はギリギリのどへの刺激を感じるから許す。
かたや、おにぎりはやりすぎだ。
のどへの刺激が強すぎる。
噛まないで飲みこむおにぎりはヤバい。テロリストだ。
何度も胸につまりかけて、苦しい想いをした。おにぎりは噛むことに決めた。
前世はヘビだったのかもしれない。